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やはりお客さまに喜んでもらえるのが何よりうれしいです。そういえば先日、こんなことがありました。あるアメリカ人のご夫婦が旅行中に二度もうちの店に来てくれたのです。拙い英語での接客だったのですが、二度目の来訪の際には「日本で一番この店が良かった。日本を一番感じられた」と言ってもらえました。店を切り盛りしつづけるのは大変ですが、こういった声を頂戴すると、まだまだ頑張ってやっていこうという気持ちになりますね。
すし職人としてのやりがい
かつて、この界隈には神田市場とスーツなどの反物の問屋街があり、そこで働く皆さんに当店は支えられていました。しかし、私が家に戻ってきた頃には神田市場もなく、問屋も激減、馴染みのお客さまは減少の一途をたどっていました。
すし屋というのはお客さまの回転が悪くなると、ネタの鮮度が落ち、味や評判に影響がおよびます。この負の連鎖を断ち切るために、私はまず店に活気を取り戻すことが重要だと考え、ランチタイムをはじめました。800円や1000円のメニューを用意しましたし、店先ではビラ撒きなどにも励みました。そうこうしているうちに、ちょうど私の父と同じくらいの年齢の経営者や経営幹部の方々が店に足を運んでくれるようになり、私を息子のようにかわいがってくれました。おかげで、楽しく冗談を言い合ったり、時には厳しいご指摘を受けたりしながら、私と店は成長することができました。常連客の皆さんには本当に感謝しています。
修行中のエピソード
コロナ禍にあって、ますます人と人が出会ったり、語り合ったりする機会は貴重で大切なものになっています。すし屋というのは対面商売の〝極み〟です。その自負を持ちながら、一人でも多くのお客さまに最高の時間を提供したいと思います。そして「死ぬまで修業」という気持ちを大切にしながら、これからも一途にすしとお客さまに向き合いつづけたいと思います。