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お金を頂戴しながら感謝してもらえるなんて、こんなに素敵な仕事はありません。それに私はお客さんや周囲の人たちに本当に恵まれました。ある仕入先は「お金に困ったらいつでもいいなさい」といってくれました。幸い、その言葉に頼ることはありませんでしたが、そういう人たちが周りにいてくれたことは何よりの支えになりました。本当に感謝しています。
ただ、実際にそう思えるようになったのは50歳を過ぎたあたりからかもしれません。それまでは自転車操業で、正直、日々の生活と仕事に精一杯でした。でも、この感謝の気持ちを抱けるようになったからこそ、2020年からのコロナ禍にも何とか向き合うことができているように思います。
すし職人としてのやりがい
はじめて働いたすし店には3年ほど在籍し、その後、知人のツテで全国にチェーン展開しているすし店で働きはじめました。店舗数が80軒くらいあったので、いろんな店にヘルプとして駆り出されながら、多くの同僚たちとともに切磋琢磨しながら腕を磨いていきました。
それからしばらくして、父の友人が営んでいるすし店に移り、そこではじめて仕入れなどを任せてもらいました。八王子市の店だったので、毎日のように八王子綜合卸売市場に出かけては魚のことを勉強させてもらいました。それからいくつかのすし店で働きましたが、そのつど仕入れを担当させていただき、魚を見る目を養わせていただきました。
修行中のエピソード
おいしいすしや料理を出すのは大前提として、「相互いに」という考え方を大切しなければならないと思っています。たんに美食を追求するだけでなく、「お客さんに対しても、仕入れ先に対しても、従業員に対しても、相互いに幸せになれるような店づくりをしたい」と思えるかどうかが、良いすし職人になれるかどうかの分かれ目のような気がします。