いかに良い食材を良い状態で手に入れるかは、すし職人にとって永遠のテーマです。私はその追求のためには、人とのコミュニケーションや昔からの縁を大事にすることが第一だと考えています。魚の仕入れに関していえば、祖父の代から通っている仲買人さんにずっとお世話になっていますが、こちらで仕入れたいものをファックスしておくと、朝になって向こうから連絡がきて「ヒラメの注文をもらってるけど、今日はイマイチ。カレイが最高だけどどうする」といった具合にいろいろと提案してくれます。また、シャリの仕入れでも当然、米の専門家である地元の米屋さんの意見や助言が重要です。とくに新米の時期には、まず様子見で半分は新米、もう半分は古米とブレンドしたものを10㌔㌘分届けてくれます。そして、私のほうで実際にその米ですしを握ってみて「ちょっとやわらかすぎる」など感想を伝えると、「じゃあ、やや新米を少なめにしてみよう」と調整してくれて、何度かそういうやりとりを重ねることでベストな配合にたどり着くわけです。
こうした専門家とのコミュニケーションを軸とした仕入れを日々実践しているからこそ、良いすしをお客さんに提供することができるのだと思います。