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コロナ禍による休業期間を経て、2020年6月26日に店を再開したときのことです。常連さんたちが集まってくれて、今まで以上に和気藹々とした雰囲気で営業することができました。私自身、それがとてもうれしかったし、久しぶりにいろんな種類の魚に触れられることにこれまでにない喜びと幸せを感じました。まさに鮨職人でいられること自体がやりがいであるということに気づくことができましたし、これからもこの気持ちをあらためて初心として胸に刻み込み、お客さまのために板場に立ち続けたいと思います。
すし職人としてのやりがい
修行先の大将とは今も親しくさせていただいています。大将はとにかく最高の食材とシャリにこだわっていましたが、その精神を片時も忘れないように心がけています。
修行時代で印象に残っていることといえば、やはり初日からカウンターに立たされたことですかね。右も左も分からない状況でしたが、一流企業の幹部の方々など、普段ではなかなかお話をさせていただくことのない方々と接することができるのが楽しくて仕方がありませんでした。アッという間にカウンター越しのコミュニケーションの虜になりましたね。
そういったコミュニケーションのなかで親しくなったある中小企業の社長さんとは、ありがたいことに今も長いお付き合いが続いています。修行時代からいろんな店に連れて行ってくれましたし、開業する際には店の内装を格安で引き受けてくれました。そして、最近も2週間に1回くらいの頻度で来店してくれています。振り返ってみると、こういった信頼関係のおかげで、今の自分があるように思います。
修業中のエピソード
技術云々以前に対面を主とした客商売ですから、一般社会人としての常識と清潔感は絶対に持ち合わせていなければなりません。
あとはやはり日々の研鑽でしょうか。私は毎日、お客さまに提供した料理をノートに書き留めておき、新しい料理などの参考にするようにしています。旬の定番などはしっかりと大切にしますが、その上でお客さまにあらたな発見や喜びを感じていただきたいと思っているからです。こういったことを楽しめなければ、鮨職人は努めらないと思います。
なお、私が最終的に目指しているのは、毎日、お客さま一人ひとりの要望に合わせた鮨や料理を提供することです。まだまだ私の力量や店の規模ではそれを実現するための仕入れを実現できないのですが、少しでもその理想に近づけるようにコースのバリエーションを増やすなど新たな取り組みにも挑戦していきたいと思っています。