目次
キャリアサマリー
1999年
地元で小学校の教員を務めた後、28歳の頃から5年間、「銀座久兵衛」で修業
2004年
「千葉蓮池 丸万寿司」で勤務を開始
妻の実家が1947年に創業した千葉市の老舗「千葉蓮池 丸万寿司」だったこと、食への関心が高まったことから、小学校の教員からすし職人に転身。東京・銀座の名店「銀座久兵衛」で腕を磨いた後に「千葉蓮池 丸万寿司」で働きはじめて以降、妻やその家族とともに一丸となって店を運営。かつての花街・千葉蓮池にあって、長年にわたって名店としての地位を確立しつづけている。
「千葉でナンバーワン」と言われるよりも、お客さま一人ひとりにとってのナンバーワンと思っていただけるような店づくりを目指しています。とくに何度か当店に通っていただいているお客さまに関しては好みもきちんと把握できているので、その人の笑顔を想像しながら仕入れや仕込みに励んでいます。
すし職人としてのモットー
千葉市は東京(豊洲市場を通して全国各地)の食材も外房の食材も入手しやすい好立地にあるので、つねに双方のいいとこ取りをするように心がけています。もちろん、そうした仕事の前提になるのは最良の仕入れであり、それには仲卸との信頼関係が第一なので、市場には毎日出かけるようにしています。おかげで、取引のある仲卸にはこちらの好みが十分に伝わっており、当店に最適な大きさや身の締まり、熟成具合のものを出してもらえるようになりました。また、これまでに何匹もの魚を見たり扱ったりしてきたので、最近はその顔立ちやフォルムを見るだけでどこの魚といったことまでわかるようになってきました。
店では私が修業時代に培った江戸前の技と当店が歴史のなかで培ってきた味の融合を目指しています。たとえば、天然のクルマエビが入ったら、私の場合は半茹でにして握ります。そうすることでクルマエビ特有のプリッとした食感を生かしながら、甘みを最大限に引き出すことができるのです。また、私自身が青森出身ということもあって、地方の良質な食材や調味料を江戸前の仕事と掛け合わせるといった試みも続けています。たとえば、青森では青唐辛子を醤油などに漬け込んだ「青唐辛子醤油」という調味料を日常的に使用するのですが、これを一部のすしや料理にも取り入れています。とくにイカの刺身やすしなどにチョットたらすと、イカの甘みが際立ち、最高に美味です。また、青森にいた頃に親しくしていた方たちから今も時折、キノコや山菜といった旬の食材を送っていただくことがあるので、それらも料理に取り入れるようにしています。
すし・料理へのこだわり
もともとは剣道一筋の生活を送っていて、いずれは剣道で生計を立てたいと思っていました。それで故郷の青森で中高の保健体育の教員になろうと思っていたのですが、当時は教員の競争倍率が異常に高くて、最終的に小学校の教員の職におさまりました。妻の与理子の実家がこの「千葉蓮池 丸万寿司」であることは当時から知っていましたが、その頃はまだすし職人になろうという気はありませんでしたね。
ただ、教員生活を送るなかで、昔から食道楽だったこともあって、しだいにすし職人という生き方にも興味が湧いてきたんです。もともと手先も器用な方だったので、ひょっとしたら向いているんじゃないか、と。それで思い切って妻に相談し、まずは他店で修業をした後に「千葉蓮池 丸万寿司」に入ることにしました。